その二日後。
ラナFCはSVヴェルシュ戦の為に、リンツの競技場へ赴いた。
ザルツァッハ戦では固くなっていた選手達の動きが、嘘のように生き生きとして、この日はまるでゴール祭りだった。
前後半で選手が総入れ替えされ、僕は6点先行した状態から後半戦のピッチへ投入された。
僕の後ろで守るのは、石見からキャプテンマークを受け継いだ厳島だ。
ラナはさらに4点を入れ、10対0で試合に大勝した。
そのうち1点を入れたのは厳島で、直後に僕もゴールを決めていた。
僕らは互いの約束を、この試合で無事に果たしたのだ。
流れの中から、理想通りのシュートを繰り出せた僕は、ボールがネットを揺らした瞬間、仲間たちから祝福を受けていた。
取り囲んでくるチームメイト達のすぐ後ろで、僕に笑顔を向けていた厳島を見つけると、僕は彼らの腕を振り切り、まっすぐ厳島の元へ走って長身に抱きついた。
少し驚いた顔で、正面から迎えてくれた彼は、僕からのキスを逃げることもなく、唇で受け止めていた。
追いかけて来た仲間たちから、さんざん冷やかされながら、彼がさりげなくピッチの外へ視線を送る。
そのまま厳島が、気まずそうな顔をしたことを、僕は見逃さなかった。
彼の視線の先はラナのベンチ。
そこには、チームの大量得点と、先ほどまで笑顔でさかんにエールを送ってくれていたにも拘わらず、すっかり冷めた目でピッチを見ていた主将の姿があった。


Fin.



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