あのあと俺と一条は、呼びに来た佐伯達に連れられて旧校舎を出て行った。
入ったきり1時間経っても出てこないからと、心配して探しに来てくれたようだった。
俺と一条が座り込んでいたのは1階の廊下の途中。
どうやら俺だけではなく一条もぼんやりと座り込み、その様は佐伯達いわく「尋常ではなかった」のだそうだ。
外に出てみると、地震も火災の爪痕も、どこにも見当たらなかった。
そういえば挫いた筈の足もなんともない。
一体俺達が見たものは・・・体験したものは・・・。
「それにしても、城陽最大の不思議なんて言うわりに、結局何もなかったわね・・・3階まで行ったけどただの廃屋だったし。せめて山崎が来てくれたら、何か見えてたかも知れないけど」
まだすっきりとしない頭を抱えて、武道館前の石段に座り込む俺と一条の異変の理由が思い当たらないのか、残念ながら超常現象に出会わなかったらしい佐伯が言った。
「冗談じゃないわよ! あんな恐ろしい処行けるわけないじゃないの」
強すぎる霊感のために、ロクに立ちいることすらできなかったらしい山崎が反論する。
彼女は一体何を見たのだろう。
あの少女には出会ったのだろうか?
「山崎に引っ張られて入ってはみたけど、2階が限界だったわ・・・まったく、だいたいこの校舎は立ち入りが禁止されてるっていうのに、こんなくだらないことのためにどうして付き合わされなきゃならないのよ」
同じくとんでもない目に遭ったらしい江藤が後を引き継ぐ。
ということは、3階のあの現象に遭遇したのは、俺と一条だけってわけか。
「ところで峰たちは、どうしてたんだ? 早々に帰ってたみたいだが・・・まさか怖くて、上に上がらずとっとと出てきたのか?」
恐怖心が少し薄れてきて、俺は峰をからかってみた。
「いや、行くには行ったが・・・・上がれなかったんだ」
「?」
「階段の入り口にみっしりとベニヤ板が打ちつけてあるから、上がろうにも・・・ほら」
峰が携帯を開き写真を見せる。
「だから、お前らが一体どうやって上にあがったのか、逆に不思議なんだが・・・・」
そこには1階奥の元階段だった場所で、「キラッ☆」と指を立ててポーズをとっている、まりあちゃんがニッコリ笑って立っていた。

 

Fin



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