カプチーノの間『うさぎ』第一部

エピローグ


江藤のお陰で追試をどうにかクリアした俺にも、遅ればせながら夏休みがやってきた。
今日は一条が、敷地の畑でトウモロコシが採れたといってメールをよこしてくれたので、そうだ、みんなで河川敷にいってバーベキューパーティーをしようと思いたち、「ついでに肉と野菜と塩コショウをもってこい」と返事を返しておいた。
あいつのことだからちゃんと買ってきて、ついでに作ってくれるだろう。
俺のノキアがまたすぐにメールを着信したので、肉の種類でも聞いてきたのかと思い、松坂牛を所望するつもりでメールを開くと、なんと峰からだった。
「ほう、珍しい・・・つか、なんで俺のメアド知ってるんだ?」
どうやら峰はあれから、ちゃんとまりあちゃんと話をしたらしい。
いろいろと誤解はあったが、峰自身も謝るべきところは謝り、そして叱るべき点についてはちゃんと反省させたのだそうだ。

『まりあも自分でやっちゃいけないと判っていて、でも止められずあんなことをしたと言っていた。逃がしたうさぎがバイクに轢かれて目の前で死んだこともあり、それがきっかけで俺が退学し、あいつはずっと自分を責めていているうちにどこか壊れてしまったのだろう。俺も責任を感じているが、たぶんまりあには、やっぱり専門医が必要なんだろうな。それはまた、親父やおふくろと話してみるつもりだ。ところでお前がまりあに刺されたときのことだが、まりあ自身は正当防衛だと言っているんだ』

そこまで読んで、俺は頭に「?」が2つぐらい浮かんでいた。
正当防衛? それに”逃がした”うさぎって何の話だ?
続きを読む。

『あいつは夜中にお前から後をつけられ、脱衣所へ入ってこられたうえ、壁際まで追い詰められたと言っている。もちろんお前を刺した以上、悪いのはまりあだが、まだ14歳の女の子が安全だと思っている家の中でそういう体験をすれば、情状酌量の余地はあると思うんだがどうだろう。今度はお前とちゃんと話し合った方がいいのかもしれないな。長々とすまん。PS。メアドは一条が教えてくれた。あいつはいい奴だな』

読み終わった俺は思いっきり叫んでいた。
「ちょっと待てぇええええええええええええええええええ!」
2秒後、俺は思い立つと、「今すぐ松坂牛を全力で買って来い」と一条にメールを打った。


fin.

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