「つまりっ……ソープか何かに行ってたってことだろう? 僕を淫乱だと非難する資格がお前にっ……」
「いけないんですか?」
「えっ……」
「俺がソープを使ったら、何かあなたに不都合でも?」
 予想をしなかった質問返しをされ、僕は慌てた。……そりゃあそうだ。僕に彼の私生活について口を出す権利などあるはずがない。彼とて、大学を卒業して一流企業に就職した社会人なのだ。
「そう……じゃ、ない……けど」
 僕は悔しかった、傷ついていた……なぜ?
 不意にシャワーヘッドが外される。
「だ、だめっ……」
 限界まで来ていた腹腔の圧力が抜け、逆の力が作用するのを感じて僕は慌てた。だが、尻を押さえようとした手首を強く捉えられ……。
「そうじゃないでしょ……見せてください、全部……」
「うあぁあああ……」
 僕は観念した。
 次の瞬間爆発するようなすさまじい音を立てながら、溜まっていたものが全部尻の穴より飛び出していく……ほとんどが水だったが、時間が立つに連れてそれは白っぽい色を帯び、やがてもっと色の付いた水分へと変化した。最後には固形物が捻り出される。
「ああ……酷い……酷い」
 ようやく解放された快感とショックで、全身から力が抜けた。ずるずると座り込みそうになる身体を、背後から狼森に抱きとめられ、そのまま力強く抱きしめられる。
「ええ、酷い人だ……俺に初めてをくれないばかりか、素直に自分の気持ちも打ち明けてくれない」
「お前、さっきから一体何を言って……」
「好きなんでしょう? だから俺が女と寝るのが腹立たしい……やきもちを焼いたって、そう言ってごらんなさい」
「やきもち……なんか……んふっ」
 やきもちなんか焼くものか……そういってやろうとした僕の口は、あっという間に強いキスでふさがれていた。頬をとめどなく涙が伝い落ちていく。


 想像を超える酷い惨状になってしまったバスルームから、再び狼森に抱えられて寝室に移動する。ベッドへ寝かされ、すぐに狼森が覆いかぶさってきた。何度もキスを求められながら、再び乳を揉まれる。
「んあぁ……そればっかり……やだ……」
「好きなくせに何言ってるんです」
「好きじゃな……」
「あなたの否定は、すなわち肯定です……さっきよくわかりましたから。やきもちなんか焼いてない、乳を揉まれるのは好きじゃない……けど、身体と行動でそれはうそだって言ってる……俺を好きだ、乳を揉まれるのは好きだ……これも好きなんでしょ」
「勝手なこ……い、いやっ、何して……んああぁ」
 不意に左胸に顔を埋めたかと思うと、狼森が僕の乳首を口に含み、そのまま強く吸い始める。そんなことをしても、当然ながら母乳が出るわけでもない。だが、反対側の乳を相変わらすもみくちゃにされ、口に含んだ乳首を吸われ、舌で転がされ、時に歯型が付くほど強く噛まれるうちに、僕はまたもや、自分が女になったような倒錯した快感を味わっていた。
 暫くして狼森が顔を上げるとベルトのバックルに手を掛ける……ファスナー部分がしっかりと膨らんでいた。彼も興奮していたのだ。
「そろそろ俺も限界です……よくしてくださいね」
「あっ……すごい……」
 グレイのショーツを押し下げた途端、勢いよく飛び出したモノは、色も形も美しいばかりか、あのペニスの大きな浮浪者よりも、ずっと太く長い、しっかりとした一物だった。
「気に入ってくれましたか? だったら、ちゃんと奉仕してください」
 僕は狼森の前に上半身を屈めると、熱く充実しているそれに手をかけ、それをしっかりと銜え込んだ。
「んんっ……んっ……」
 喉の奥で締め、唇を窄めて出し入れする……苦い粘液が口の中に広がることさえ、僕を恍惚とさせた。
「ああ、いいです……けれど、どこであなたがこんなことを仕込まれたのかと考えると、腹が煮えくり返りそうだ」
「んああっ……あっ…ぁ……」
 いきなり後頭部を押さえ込まれ、一気に喉の奥まで受け入れさせられる。今まで受け入れたこともなかったほど、喉の奥を広げられ、生理的な涙と鼻水が顔をダラダラと伝い落ちる。苦しさで彼の固い腿をこぶしで叩くと、ようやく解放された。器官へと一気に空気が流れ込み、はげしくその場で咳き込む。
「ハハハ……汚いですね。酷い顔だ」
「だっ……れのっ……せ…げほっ、げほっ……」
 涙で視界が歪む。鼻をズルズルと啜っているといきなり顎を捕らえられキスされた。
「たまらない、本当にかわいい人だ……」
「な、何言っ……んっ…おい…の……」
 唇へ、額へ、頬へ、そして、鼻水の止まらない鼻へ唇を押し付けられ、あろうことか、僕の鼻水まで啜り出した。常軌を逸した行動に僕は混乱し、さすがに彼の身体を強く押し返す。だが、逆に身体をベッドへ押し倒され……。
「もう、我慢が出来ない……リョウちゃん、俺のモノになって……」
 脚を割り開かれ、持ち上げられた腰に勃起を押し付けられた……僕は焦って身を捩り、逃げようとする。
「ちょ、ちょっと待てっておいっ……」
「なんで逃げるんだ、リョウちゃん……!」
「だからっ……狼森だって見てただろ? 僕がさっきまで誰と何してたか……」
「ええっ、汚らしいホームレスと乱交してましたよね、おまけに犬にまで犯されて、アンアン喘いでた……」
 酷い言われようだったが全部事実だ。
「だったら……」
 それを見ていたのに、なぜこんなことをするのか。そう問おうとすると。
「今まであんなに興奮したことなかったですよ。外だっていうのにマス掻いたのなんて初めてです。しかもいつもよりすっごく多く出た」
「お前……」
 僕がホームレスや犬に犯されるのを見て、狼森もオナニーしていたらしい……薄々気づいてはいたが、想像を遥かに超えた変態だった。
「それ以上に腸が煮えくりかえりましたよ。俺のリョウちゃんが誰かに犯されてること、しかもそれでアンタが感じまくってること……」
「何言って……」
 なぜ、狼森はこんな言い方をするのか……それは相変わらず謎だったが、それ以上に彼の執着心の強さに圧倒された。
「リョウちゃん、今度は俺で感じて……俺のものになって……」
 再び狼森が腰を押し付ける……固い先端が柔らかくなっていた場所にニュルリと減り込んだ。僕は慌てて腰を引く。

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