「アドルフ・・・俺はこういうのは、初めてだ。だから、お前を満足させてやれる自信はないし、何より怖い・・・それでも、お前が・・・お前がどうしてもって言うなら。・・・アドルフ?」
不意に頭へ手を置かれた。
見上げるとアドルフが目を細めて俺を見つめている。
優しい表情だった。
「無理せんでいい・・・お前の手コキもなかなか気持ちいいぞ。これで充分満足だ」
そう言って顎を捕えられ、キスされそうになった。
アドルフの厚い胸を押して、俺は抵抗する。
「ピエール・・・?」
戸惑っているアドルフの視線を感じながら、俺は腹を決め、ジーンズと下着を一気に下ろすと裸になった。
これで自分の身体を守る物は何もない。
アドルフの前に、一糸まとわぬ姿で自らを曝け出したのだ。
「俺を抱け、アドルフ」
「お前、何を・・・ふ・・・んんっ」
戸惑ったような淡い瞳を制するような心意気で、最後まで視線でとらえながら、彼の肩に腕を回して抱きつき、その口唇を俺は奪った。
アドルフは再び舌の動きでキスに答えてくれ、俺の身体を支えるようにして床へ横たえると、自らもまた裸になる。
俺の身体を跨ぐようにして、彼が覆い被さってきた。
「んんっ・・・アドルフ・・・んっ」
「ピエール・・・いいんだな?」
間近に瞳を覗きこまれ、真剣でいながら、どこか切迫したような表情で問われる。
圧し掛かられたことと、その表情に少し気圧されて、一瞬戸惑ったものの、それでも俺はしっかりと彼の瞳を捉え、黙って頷いた。
すぐに口唇が合わさり、同時に首筋や胸、脇腹、そして下腹部の表面を、掌の感触が彷徨った。
触れられる度に肌がざわめき、たまらない気持ちになってくる。
俺もまた腹に当たる、彼の物へ手を這わせ、そこから性感を引き摺りだそうと努めた。
アドルフが一旦俺の上から退くと、今度は身体を反転させられ、後ろから腰を抱かれる。
その姿勢のままで、また首筋や肩、耳などに口唇が触れ、前に回された掌が胸や鎖骨、脇などを這いまわる。
とっくに俺は、声が抑えられなくなっていた。
ふいに彼の指が後ろの穴へ触れたかと思うと、すぐに強く押しいれられた。
「あっ・・・んんっ・・・」
反射的に身体に力が入って、アドルフの指先を締めつけてしまう。
縋るような気持ちで、俺は肩越しに彼を振り返った。
「大丈夫だ、ピエール・・・」
月の明るい窓を背に、逆光になったアドルフの表情は、闇に紛れてよく見えなかった。
それでも優しい声が、そう言って俺を宥めてくれた。
腹のあたりを支えていた掌が再び動く。
「は・・・ん・・・」
萎えかけていた俺の物が包みこまれて、ゆっくりとした愛撫を与えられた。
同時に首筋や肩に優しくキスを落とされているうちに、またうっとりとした気分になってくる。
そうしながら、後ろへ入れられていた指が再び蠢き始める。
穴を行き来する感触に、俺はいつまで経っても慣れることはできなかったが、次第に痛みは感じなくなっていた。
指の数が増やされて、そこを広げられようとしているのだとわかる。
後ろからは何度もアドルフの物が当たっていた。
もう随分と長い時間、彼は勃起を保ったままだった。
俺が背後へ手を伸ばして彼の物に触れたとき、息を詰まらせる音が聞こえてきた。
「っ・・・ピエール・・・?」
「いいからアドルフ、もう・・・」
俺は脚の間隔を広げると、重心を少し前へ移して肘を軽く曲げ、彼が入れ易いように尻を高く上げた。
そこへ彼のものを、自分で導こうとする。
「何・・・言ってるんだ? まだ無理だ」
焦ったアドルフが腰を引こうとするのがわかったが、構わず俺は尻を押しつけた。
「大丈夫だ・・・お前なら・・・いいから来い」
「駄目だ・・・絶対、こんなんじゃ・・・」
「アドルフ、好きだ。・・・お前が欲しいんだ、俺も・・・」
「ピエール・・・」
その後、暫くそんな押し問答を続けたが、間もなく俺の身体は経験したこともないほどの痛みに襲われた。
最中の意識は曖昧だ。
何度もアドルフが気を遣って、宥めてくれた気もするし、やめようとしてくれた気もする。
だが結局は上から押さえつけられ、俺は、いつのまにかアドルフがシャツを敷いてくれていた床に、頬や肩を擦り付けながら、彼を受け入れていた。
その間は泣いたり叫んだりしていたような気がする。
はっきりとは覚えていない・・・というより、あまりに無様で思い出したくはない経験だった。
そうしていつしか眠りにつき、明け方クシャミとともに俺は目を覚ました。
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