その後少しだけ洗い物を手伝い、住職の奥さんが作った雑煮を御馳走になって、西峰寺を後にする。
「あれ、お前確か・・・」
駅に向かって参道を歩く道すがら、俺は見覚えのある男と遭遇した。
男というか、少年とだ。
「あ、畜生お前か!」
小柄な少年は俺の顔を目にすると、非常に失礼な挨拶を返してきた。
文化祭の帰り道、俺を道連れに自殺を図ろうとしたデンジャラスボーイの美少年だった。
「えっと・・スペースシャトルじゃなくて・・・」
「ロケットでもスペースシャトルでもねえよ、慧生だよ、つまんねーんだよ、名前覚えろよ!」
いや、たった一度会っただけの、知り合いでもなんでもないヤツの名前を、ヒントと言えるぐらいには覚えていただけ、大したものだと自分では思うんだが。
聞けば香坂慧生(こうさか えいせい)はカフェで呼び込みのバイトをしているという。
この寒空にシャツとベスト、そしてエプロンという姿だった。
「お前、すげー寒そうだな」
「寒いに決まってんだろ! 畜生、そのダウン貸せや」
「ああ、なんかさすがに気の毒だわ・・・」
俺は素直にダウンを脱ぐと慧生に掛けてやった。
その後俺の親切をまた勝手に勘違いした慧生が俺をナンパし始め、俺が上手く断り切れずにいると、通りすがりの一条篤が俺を助け出してくれた。
助かりはしたが、文化祭の帰りのこともあり、ちょっと俺は気まずく思っていた。
どこまで一条に見られていたのだろうかと。

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