新学期が始まった。
恋しい寝床に別れを告げて、支度をすると、外に出る。
「ううっ、寒い!」
ついでに眠い、辛い、ヤバイ。
短い冬休み中は、大晦日から元旦にかけて出かけた以外は、ほぼゲーム三昧で昼夜逆転ぎみの寝正月だった。
例年のごとく、最後の日になって慌てて宿題に手をつけたが間に合うはずはなく。
「おはよう、原田」
鈍り切った身体を引き摺り続け、ようやく遊歩道を抜けたところで、俺の犬登場。
「おう、一条・・・あとで宿題見せろや」
「わかったよ、はら・・・」
「だめよ、一条君」
見事なタイミングで江藤里子もやって来た。
今日も見事な素足ぶりである。
「よお」
死ぬほどテンションが低い声が聞こえて振り向くと、峰が立っていた。
「おう峰」
「・・・おはようございます」
「あ、おは・・・」
後ろから挨拶してくれたまりあちゃんに挨拶を返そうとしたが、また峰の陰に隠れてしまった。
二人は俺達の横を、無言のまま通り過ぎて行った。
「峰君、また傷だらけになっているわね・・・」
同情心たっぷりな声で江藤が言った。
あの兄妹も、相変わらずのようだった。
俺はこっそりと一条篤に近づき、やつに念押しで耳打ちしておく。
「俺たちも早いとこ学校行こうぜ」
そして俺に宿題を写させろ・・・と続けようとした。
「うん、じゃあ行こうか」
そう言って俺の肩を抱き寄せて来る一条。
すかさずその手を払い落す。
「こら、ちょっと待ちなさいそこの二人! 宿題は自分でやれって言ってんのが判んないの!?」
もうバレた。
「一条、逃げるぞ」
「うん、原田」
俺がダッシュすると、一条が嬉しそうに追いかけて来る。
「待ちなさいよ、こらー!」
江藤が鬼の形相で追いかけて来る。
ありふれた日常が、また始まった。
end
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