恐ろしく良く当たると評判の御神籤を、女子4名が引きに行っている間、俺は一人で休憩させてもらうことにした。
「いや、しかしよくやるよなぁ・・・」
西陽神社は大鳥居の真向かいに拝殿がある。
その並びにお守りやお札、破魔矢などを販売している社務所があり、その続きの特設テントで御神籤コーナーを置いている。
昔は社務所で一緒に御神籤もやっていたのだが、いつしか元旦の御神籤がよく当たると雑誌などで評判になり、それがこの初詣の賑わいの大きな原因にもなっていて、数年前から特設テントが立つようになった。
目の覚めるような佐伯の青い振袖は、こうして見るととても目を惹いた。
女4名はグループで御神籤コーナーへ向かって歩いていたが、最後尾へ並びつつも佐伯の視線は相変わらず鳥居の方へ向けられたままだ。
「あいつ、やっぱり気になってるんだな」
ちょっと気の毒になってきた。
「いらっしゃい」
割烹着を来た恰幅の良いおばちゃんがやってきた。
「あ、お姉さん熱燗ひとつね」
「あいよ、キムチシェイクだね」
全然違う注文を繰り返して奥へ消えようとするおばちゃんを、俺は慌てて引きとめた。
「すいません、せめて無害なものにしてください」
俺の注文がクリームソーダに修正されたのを見届けると、あらためてベンチへ腰を下ろし、特設テントの賑わいを眺める。
いろとりどりの振袖や訪問着、袴姿が群がるその光景を、呉服屋の社員がほくそ笑みながらどこかで見ているのだろうか。
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