<エンド2:直江編>
「よし、これで洗い物は全部かな・・・つうか、冷てぇし寒いし!」
洗いあげた皿を水切り用のワゴンに重ね、一息吐く。
食堂へ戻ってみると、既に誰もいなかった。
「なんだ、峰の奴トイレかな・・・。つうか、マジで情け容赦ないよなぁ・・・いくら罰ゲームったって、あれだけ女子がいんだから、少しくらい手伝えっての・・・うわぁっ」
「は〜らだっ・・・痛い、痛いってばっ」
「びびった、マジびびった!」
俺は後ろから抱きついてきた直江の腕から逃れると、奴のボディに殴る蹴るの危害を加えた。
直江は悲鳴を上げながら、食堂を逃げまどう。
ゲームは結局俺と峰のチームが最下位に終わり、罰ゲームとして俺達には新年会の後片付けが言い渡されていた。
後片付けといっても、即席で決まった新年会である。
直江が持ってきた、『FLOWERS』特製のレトルトカレーをレンジでチンして食べ、水道水をグラスに注いだだけだから、大したことはない。
だがそれでも12人分の皿とスプーン、そしてグラスが出たわけだから、そこそこの仕事量である。
ひとまず食器を洗う役目は俺が担当し、峰には食堂から炊事場まで運ばせたり、テーブルや椅子を元通りに戻させたりすることにしたのだ。
深刻な金属アレルギー持ちの峰の事である。
極端に皮膚が弱い彼が、アルミのスプーンや、或いは安ものの洗剤に反応しないとも限らない。
しかしながら自ら買って出たことだとはいえ、お湯が使えない労働環境はなかなか過酷だったのだ。
「せっかく手伝いに来たのに、酷いよぉ!」
涙目になりながら直江が訴えてきた。
「んなもん、とうに全部終わったわ、もっと早く来いっての! ったく、暖房ねえし、湯もでねえし、鼻は出るし、指かじかんでるし」
ひとしきり暴行を終えると、俺は可愛い自分の指先にはあ〜っと息を吹きかけた。
「うわ・・・」
「な・・・んだよ」
食いつくような視線を感じ振り返ると、直江が俺の手元を凝視している。
「いや・・・真っ赤だなあと思って」
「だから冷たかったって言ってんだろ! 水しか出ねえんだよ、この厨房・・・って、おま・・・何すっ・・・」
不意に両手を掴まれ、引き寄せられる。
目の前には直江の顔。
「本当だ・・・可哀相に。温めてあげるよ」
そう言うと直江の顔がぐっと近づいてきて。
「や・・・やめっ・・・・」
直江ごときにキスされてたまるかと、手を引っ込めかけたその瞬間。
はあ〜っ。
「・・・温かい?」
湿った空気が直江の口元と俺の手の間に広がっている。
「ああ、まあな・・・」
「そう、良かった!」
その後直江はひとしきり、俺の両手を掴んで指先に息を吐き続けていた。
俺はというと、なんだか拍子抜けした気分で、したいようにさせたのだった。

Fin

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