<エンド1:祥一編>
百合寮を出て、城南女子の校庭をふらふらと歩く。
仄明るく見える東の空に気付き、校門前の時計を見ると午前6時を過ぎていた。
羽根突き大会を終えて、食堂へ移動していた俺達は新年会へとなだれ込んでいた。
新年会といっても直江持参のレトルトカレーと水道水である。
だが、馬鹿にしちゃいけない。
『FLOWERS』の特製レトルトカレーは、レンジでチンするだけで充分美味しいし、水道水といってもここは、かの聖水が安置してある洞窟と小川のせせらぎが流れる城南女子学園であるから、マリア様の御利益付きである。
きっとそうに違いない。
もっとも、水道水だから泰陽市水道局から流れる上水道で、うちの蛇口から出ているものと同じだとは思うが。
人生思い込みが肝要である。
「そうか・・・よかったな。じゃあ切るぞ」
そう言って、比較的長い通話を終えた峰が漸く携帯を仕舞った。
「まりあちゃん、良くなったのか?」
少しだけ穏やかに見える峰の顔を見て、俺は聞いた。
「熱が下がって、朝から雑煮を食っているそうだ」
松の内とはいえ朝6時台から雑煮とは、大した回復ぶりである。
「そうか。食欲旺盛なのはいいことだが、病人なのにえらい早起きだな」
「いや、寝てないだけだろう」
「そういや、お前の携帯ずっとメール受信しっぱなしだったな。まあ、回復して何よりだが、新年会まで付き合ってないで、さっさと帰ってやればよかったのに」
峰が心配で碌に寝られなかったのだろう、まりあちゃんを思うと、少しだけ気の毒になった。
「そのつもりだったんだが、お前が残るって言い出したからだろう」
「まあそうだが・・・ん? なんだ、もしかして俺に送ってほしかったのか。お前んちの方が近いだろうに」
「あいつもいたからな・・・俺だけ帰るわけにはいかん」
「あいつって、ええと・・・うひぃいい」
気不味い空気が立ちこめたその瞬間、一際強い風が吹きつけてきた。
袴の裾がふわりと広がり、股引を履いていない素足に細かい砂利が容赦なく叩きつける。
これは結構、天気が荒れそうな気配だった。
「やっぱりちょっとエロイな」
ふと見ると、峰の視線が俺の足元に降りている。
「男の足をジロジロ見てんじゃねえ! まりあちゃんに言いつけるぞ」
「それはマジで勘弁しろ。ほら、これを貸してやるから・・・」
「いらねえ! っていうか、お前何振袖持って帰って来てるんだ、山崎たちに返して来いよ!」
「目の前で持って帰ったが、何も言われなかったぞ。ほら、着てみろよ。絶対似合うって」
「着るか!」

Fin

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