「うひぃ〜、さみぃよ〜!」
なぜか俺は素っ裸になり、城南女子学園の校庭に立っていた。
「さて、これから校庭を10周して頂きます」
山崎が冷たく俺に言い放つ。
「マジで? なんで10周も走らないといけないの? しかもこんな恰好で?」
「あなたが選んだことです。異論などある筈がないでしょう?」
「勘弁してくださいよ〜! っていうか、峰は?」
よく考えたら、俺一人が裸になって立たされていた。
「峰さんでしたら先ほど帰られましたよ。なんでも妹さんが風邪をこじらせたとか。・・・まったく、相変わらず我儘な子だこと。いつまでお兄様を振り回すつもりなのだか」
「まあ、そう言ってやるなよ。ずっと兄妹ふたりでやってきたらしいんだからさ。・・・それにしても峰のヤロー、俺を見捨てたばかりが、断りもなく帰りやがって・・・。ところで、山崎はなんでさっきから、明後日の方向ばっかり眺めてんだ? 早朝の薄暗い空に、何か見えるのか?」
しかもなぜだか耳が真っ赤である。
「なんでもありません、寝ちがえただけです」
マリア様が見守る学園で、山崎があっさりと嘘を吐いた。
「さっきまで普通にしてたじゃん。いつ寝ちがえたっていうんだよ? ゲーム中にでも寝てたのか?」
言いながら俺は、山崎が見ている方向へ回り込んでやった。
「ひっ、こっちに来ないでくださいっ!」
「だってそっぽ向かれてちゃ、喋りにくいじゃん」
さらに別の方向を向こうとした山崎の目線を追いかけて、俺はことごとく前に立ってやった。
「べ、べつに喋るぐらい、顔を見なくともできるでしょう!」
「失礼だろ。城南はどういう教育をしているんだまったく。ところで、山崎さんや。俺が一人で走るのは、ちょっと罰ゲーム的につまらんだろう。というわけで、誰かもう一人つけてくれませんか?」
「わ、わかりました・・・交渉してみましょう。きっと一条さんなら、快諾を・・・。まったくもう、我がオカルト研究部主催のゲームに、なぜこのような破廉恥な罰ゲームを・・・」
山崎はブツブツと一人で文句を言い始めていたが、俺はそれを無視すると。
「主催者責任として、お前が走ればいいだろ」
「はあっ!?・・・・・きゃあっ」
俺の提案に目を見開いて、まともに正面に立つ俺をガン見した山崎は、奇妙な悲鳴を上げると、顔を両方の掌で覆ってしまった。
自分で俺の大事な逸品を見ておいて、まるで事件か事故にでも巻き込まれたような被害者ぶり全開だった。
失礼な。
「ほら、一緒に走ろうや。別にお前まで脱げって言わないからさ」
そう言って手首を掴もうとした瞬間、山崎が力いっぱい腕を引っ込めてしまった。
「へ、変態っ、・・・・いやあああああああああああっ!!」
「おーい、そんなに飛ばすと、後がもたないぞー」
そのまま振袖姿にありえないスピードで校庭を猛ダッシュし始めた山崎の後を、俺は素っ裸で追いかけたのであった。
だが、2周目に入る前に、校舎から飛び出してきた江藤が追い付いて、俺にフライング・ラリアットを決めて俺達を止めると、なぜか江藤から改めて、罰ゲームとして新年会の後片付けを命じられたのだった。
畜生・・・脱ぎ損じゃねえか。

次へ

『城陽学院シリーズPart2』へ戻る