『月光〜肝試し編』 「ナンパ?」
俺、原田秋彦(はらだ あきひこ)は聞き返した。
「うん」
一条篤(いちじょう あつし)は肯定した。
「お前がか」
「そうみたい」
「城南(じょうなん)女子を?」
「そうなんだって」
なんだそりゃ。
解体したテントの骨組みを足元へ下ろすと、レンチを工具入れへ戻し、一条を見上げた。
嬉しそうに俺を見下ろす一条。
「もう一回聞くぞ。今日の文化祭に来ていた城南女子の生徒をお前がナンパした。意気投合してこのあと旧校舎で肝試しをすることになったわけだが、相手は3人いるから、こちらも頭数をそろえなきゃならない。だから俺に来てほしいと」
「そうなんだ」
「・・・・・・本気で言っているのか?」
「うん、本気だよ」
「お前が・・・ナンパ?」
「そうらしいんだ」
だから、なんなんだその伝聞口調は。
ニコニコと俺に笑いかけてくる一条の目に、疑問の色はない。
だがいろいろと、可笑しすぎるだろ。
まず、こいつが他校の女子生徒をナンパするはずがない。
とてもそんな勇気があるヤツじゃない。
いや、勇気はあるか。
しかし一条の好みのタイプは・・・・まあ、この際それはともかくとしてだ。
なぜナンパから旧校舎で肝試しという展開になるのか、そこが意味不明だ。
「・・・間違いなく、誰かの口車に乗せられたんだろうな」
「なんのこと?」
「いや。・・・一条、ところで相手の女の子たちというのは、一体どんな・・・」
そこまで言いかけたとき、向こうから一条に声をかけながら手を振って通り過ぎてゆく女子生徒たちに気がつく。
一条も彼女たちへ振り返す。
純白のセーラー服とスカート。
城南女子の制服だ。
彼女たちは旧校舎の方向へ向かって歩いていく。
「一条・・・あの子たちか?」
「そう。山崎さんに佐伯さん、小森さん。山崎さんと佐伯さんは僕たちと同じ二年で、小森さんは一年生だよ。部の先輩後輩みたい」
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