「それじゃあまず先頭グループは峰とまりあちゃんな。旧校舎はこの昇降口から西へ向けて細長く建っている。昇降口からまっすぐ突き当った西の端に階段がある。そのまま3階まで上がり、廊下を今度は東へ向かって歩き、一番端にある角部屋が、旧音楽室だ。そこで写真を少なくとも1枚撮ってこい。峰達がスタートしたら、次は佐伯と小森。その次が江藤と山崎。最後に俺と一条な。各自手元の時計を見て、5分おきにスタート。音楽室前の写真は1枚3ポイントとして、枚数分加算する。2階を回るかどうかは任意とするが、回った場合はプラス3ポイント。その場合も証拠として写真を残してくれ。終わったら順位を決めて最下位チームに罰ゲームを実施する。以上だ。何か質問は?」
「ちょっと、なんであたくしと、このチキン剣士が一緒になるのかしら」
「黙りなさいよこの人格破綻女! ・・・原田くん、あたしも納得いかないわよ。最初のクジの結果を無視したのはどういうことなの?」
「あ〜・・・それはだな・・・」
「みくはこれでいいですぅ〜、ねぇ初音さま!」
「だから寄るな小森! ・・・山崎、べつにクジなんてどうだっていいじゃないの。そりゃ、できれば私も山崎と組みたかったけど・・・」
「えぇーっ、初音さまひどいですー! みくと一緒じゃ嫌なんですかぁ〜!?」
「あぁ〜・・・そうじゃなくて、だから山崎は霊感が強いから、できたら3人で・・・」
「ばかねぇ、男子と組まなきゃ意味ないでしょ。ねぇ一条さん、やはりあたくしと・・・」
「あぁっ・・・いやぁ、もう決まったことだし・・・っ、痛いよ原田・・・」
すり寄ってきた一条の足を踏んでおいた。
お前のせいだろ、お前の。
「あぁ、もううるさい! なんでもいいから、さっさと始めましょうよ、遅くなる!」
「なんだ江藤、このあと予定でもあるのか?」
「そうじゃないけど、さっさと終わらせたいのよ。・・・ましてや山崎雪子と一緒だなんて、サイアクよ・・・」
「お前、あの子と昔、何かあったのか・・・?」
えらい嫌いようだなぁ、さっきから。
「・・・あたし、城南女子学園小学校出身だって言ってなかったっけ?」
「えっ・・・江藤が・・・ぶっ」
このお嬢様学校の純白セーラー服を・・・。
「何が可笑しいか!」
「可笑しくない、可笑しくない・・・っ」
「山崎雪子とは、あれでも中学までずっと同じ道場に通っててね・・・」
今は肘を痛めて止めたみたいだけど・・・と江藤が続けた。
「なるほどね・・・」
腐れ縁ってやつか。
「でも、だったらいいライバルってやつじゃないのか」
「あの性格を目の当たりにして本気で言ってるの?」
「ああ、いや・・・その、なんだ・・・」
まあ、試合中にためらいなく反則をしかけてきそうなタイプではあるな。
すると、はぁと長いため息をついて江藤が続けた。
「問題はそこじゃないんだけどね・・・さっき佐伯さんが言ってたの聞いてなかった? アイツ、あたし以上に霊感強いのよ」
「ああ・・・」
そういえば。
「ま、いいわ。とっとと行って、とっとと済ませるから」
そういって江藤が峰を急かしに行った。
「あいかわらず男前なヤツだな・・・」
「それじゃ、スタートするぞ」
峰が言うと、まりあちゃんが腕に飛びついて一緒に校舎へ消えた。
城南女子の連中は相変わらず、組み合わせについてギャーギャー揉めている。
本来峰と組むはずだった俺がまず、まりあちゃんに譲り、まりあちゃんと組む筈だった山崎が、だったら一条と組ませろと言いだした。
すると一条と組む筈だった小森があぶれるので、俺が一緒に組もうと声をかけると、小森は佐伯がいいと言いだした。・・・俺涙目。
佐伯もよく知らない江藤よりは小森がいいようで、だったら俺と江藤が組もうとすると、「じゃあ僕と原田と山崎と江藤とで、もういちどクジを引こう」と、なぜだか一条が言いだした。
まあ反対する理由もないので再選したところ・・・この結果に至った。
「最初のアミダは意味ねーじゃん」
2度目のクジはもっと意味が判らない・・・。
「あーもう、うるさい! 小森行くよ!」
「はいっ、初音さま!」
「だからくっつくなっ・・・」
峰達がスタートしてまもなく、2組目の佐伯と小森がスタートした。
5分ルールは守られてない気がした。
「ま、いいか・・・」
いちおうペナルティをとっておこう。
手元のアミダくじの下に、「佐伯・小森ペア −2pt」とメモをする。
「あっ、ちょっと待ちなさい。佐伯、小森・・・おいていくなんて酷いじゃない!」
「こらっ、山崎雪子っ・・・5分ルールだって言って・・・」
「なにしてるの、江藤里子、体が重くなったんじゃありませんの? そんな足捌きじゃ秋の大会が思いやられますわねぇ」
「うるさい山崎雪子! あんたはそうやって反則ばかりしてるから・・・・」
ギャーギャー騒ぎながら、大人しく問題のグループも校舎へ消えていった。
「やれやれ・・・マイナス2pt、っと」
「僕らはきっちり5分ルールを守ろうね、原田」
俺の手元を覗きこみながら、すり寄ってくる一条の動きに合わせて一歩間合いを取ると、「原田、一条 −2pt」と書き込んだ。
「俺たちもスタートするぞ」
「えっ、あ・・・だけどルールが・・・」
「気にするな」
俺の貞操の方が大事だ。
「原田ぁ〜・・・待ってよぉ〜」
05
『城陽学院シリーズPart1』へ戻る