*二日目:伝統料理の昼食* 2時頃にホテルへ戻り、食事を摂った。
メニューは名物料理のパエージャだ。
直径1メートルほどの巨大なパエージャパンに、サフランで色づけされた黄色いパエージャ。
昨日も夕食でパエージャが出てきたが、これは少々感じが違う。
「チューファ風パエージャだよ。カタツムリや子ウサギの肉が入ってる。本来パエージャは猟師料理。だから山の幸が入っているものなんだ」
ペペが解説してくれた。
昨夜食べた物は、エビやイカ、ムール貝等が入った、日本でもよく見る海鮮パエージャ。
でもペペによると、本当のパエージャにはそんなものは入らない、ということらしい・・・チュフィーノである彼にとってはそうなのだろう。
料理人が俺達に作りたてのパエージャをひとしきり見せてくれたのちに、取り皿に分けてくれた。
興味深かったのはカタツムリで、感想はと言うと・・・。
「貝・・・ともちょっと違うような」
食感はサザエよりはるかに柔らかく、当然だが磯の香りがしない。
個人的にはサザエの方が好きだ。
ふと気がつくと、一条がいなかった。
一緒に飲み物を取りに来ていた橋本を捕まえて聞いてみる。
「例によってお父さんの仕事関係だよ。外出申請が提出されていて、理由もいつもの事だからね。あっさり許可が出ていたよ」
と、眼鏡を曇らせながら教えてくれた。
興奮しているのだろうか、・・・頬も赤い。
でも、何故に?
「修学旅行に来てまで仕事かよ・・・」
そうは言っても、ここはチューファ。
一条のグループ会社がある街だし、無理はないのかも知れないが、ちょっとあいつが気の毒になった。
橋本がオレンジジュースを二つ注いでテーブルに戻って行く。
一条がいなくなったとあっては、成績が俺と変わらない橋本も、一人では心もとないからだろうか。
委員長である江藤と同じテーブルに着いているようだ。
一つのグラスを江藤に渡し、もう一つを自分の前へ置いてそのまま座ろうとして・・・・江藤のパートナーである川口を怒らせていた。
間もなく橋本がドリンクコーナーへ舞い戻る。
「あいつも大概アホだよな・・・」
ちなみに俺は授業中に寝ていて今の成績だが、橋本は真面目に聞いてあの成績だ。
・・・いや、だからどうだと言うわけではないのだが。
橋本はそのまま昼食後の自由行動も江藤達に連れて行ってもらっていたようだ。
女子と一緒に、一体何を見て回っているのやら。
09
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