*四日目:出発前のホテルにて* 翌日早朝、部屋に江藤が現れた。
「反省文・・・二人とも書いて、朝食前に提出すること」
「すんません」
俺は部屋の前でA4サイズの用紙を受け取ると、江藤に謝罪した。
昨夜は当然のことながら、御目溢しの余地もないほどの門限破りとなっていた。
俺達が戻って来ないため江藤と橋本は全生徒に心当たりがないか聞いてまわり、井伊教諭と副担任の有村小五郎(ありむら こごろう)教諭も携帯で連絡を取り合いながら、あちこち探し回ってくれていたらしい。
江藤は疲れているようで、いつもの勢いが完全に消えていた。
ただでさえ委員長として忙しそうなのに、俺達が問題を起こしたせいであまり寝ていないのだろう。
目の下の深い隈が哀れだった。
「帰る前に何か奢っておくか・・・」
ちなみに昨夜部屋に戻ると、峰の携帯には着信が20件あった。
「お前なんで携帯持って行かなかったんだよ」
「原田に言われる筋合いないと思うが・・・そういえばお前も携帯持ってきていた筈だろ」
確かに俺も携帯は持参している。
だが、なぜかいつまで経っても俺だけ圏外のままなのだ。
「変なんだよな〜・・・海外で使える筈なのに」
「海外設定はしているんだろうな」
「設定?」
「してないのか・・・」
その後ロビーでパソコンを借りて、俺の使っている携帯業者のホームページを確認しながら、峰に携帯の設定を海外モードへ変えてもらって電源を入れ直すと、音声及びメールの着信履歴がこの3日で100件を超えてしまい軽く引いた。
「あいつ・・・」
性質の悪いスパム業者に狙われたのかと思った。
「ストーカーで立件できるレベルだな、・・・まあ俺のも似たようなもんだが」
その80%は一条からだった。
ちなみに峰の携帯へは、極度のブラコンである妹のまりあちゃんが、地球の裏から日がな1日脅迫にも似た愛を、今なお送り続けているようだ。
携帯を置いて出かけたくなる気持ちが、わからなくもなかった。