『すれ違う心』(篤編)
「あれ・・・俺の服は?」 「おい、いい加減に放せよっ・・・俺、まだ着替えて・・・んんっ!」
応援席でみんなに謝りまくった後でトラックへ戻ってみると、次の競技に備えてすでにパーテーションが撤去されていた。
「ああ、大森君達が回収していったわよ」
山村が教えてくれる。
「マジかよ・・・」
もう一度応援席へ戻ってみる。
向けられる視線が凄く痛い。
「きゃー、巫女さんよー」
「可愛い〜」
「うるせー、野郎が気色悪い声出してんじゃねー」
俺は後ろを付いて歩いてくる、直江と江角を振り返って怒鳴った。
「いや、だってそれはお前、原田が悪いっての・・・ハイその顔頂き」
「こら直江、てめぇ勝手に写真撮んな」
屈辱を盗み撮りされて、俺は直江を追いかける。
「原田、原田ー、俺も1枚」
「こら、江角も撮んなって・・・!」
「ねぇねぇ、さっきみたいに色っぽいポーズ見せてよ」
「何の話だ・・つか直江、その写真消せよ!」
お前は絶対に、猫々ハーレムの刑アゲイン決定だ。
「だから、脚捲りあげて、胸チラして・・・」
「だーっ、んなポーズしてねぇっての!」
「してたってば、ネット越しでよく見えなかったけど、ねーっ江角?」
「うんうん、してた! 肩肌蹴たりしてて、やばかった!」
「してねーっ! って、えっ・・・?」
「秋彦、ちょっと・・・」
腕を振り回しながら馬鹿野郎2名に抗議していた俺は、突然その手首を掴まれて後ろに引っ張られた。
「お、おい・・・ちょっと」
「・・・・・・・」
無言で俺をひっぱってゆく問答無用の馬鹿力に、俺はなんとなく胸騒ぎを覚える。
「やべ・・・やりすぎたんじゃねえの?」
「やばいな、原田大丈夫かな・・・」
後ろから、江角と直江のそんな会話が聞こえてきた。
突然暗がりに連れ込まれた俺は、有無を言わさぬタイミングで、強く口唇を塞がれる。
「つっ・・・」
いきなり深く口づけられ、入って来る舌にびっくりして、思わず噛んでしまった。
「あっ・・・ごめん、篤・・・」
「・・・・・っ!」
篤が一瞬俺を睨みつけた。
「や・・・ちょ、ちょっとおいっ」
今度は襦袢の胸の辺りを鷲掴みにされ、そのまま勢いよく肩から下ろされた。
両腕を拘束されるような格好になり、抵抗もままならない状態で、壁に背中を押し付けられる。
「痛っ・・・篤っ、何を・・・」
「それはこっちのセリフだよ。君は僕の何なんだ?」
「えっ・・・」
突然そんなことを問われ、戸惑っているうちに、篤が首筋に吸いついてきた。
「やっ・・・あ、あつ・・・しっ・・・」
グラウンドから無理矢理、体育倉庫へ連れ込まれ、力づくで押さえつけられ、乱暴に服を脱がされて・・・。
「応えられないのか・・・なるほどね。じゃあ、思い出させてやるよ・・・」
「痛っ・・・や、やだ、篤っ・・・やめろ・・・」
再び腕を強く引かれて、そのまま引き摺り倒される。
2、3枚を積み上げた固いマットへ、どしんと身体がぶつかり、一瞬呼吸が出来なくなった。
頭がくらくらとする。
その間に篤がジャージの上着とTシャツを脱いで、無造作に床へ投げ落とした。
細く差し込む強い夕日の色。
逆光で見る篤の身体は、肩と胸の筋肉が盛り上がり、引き締まったウエストにかけて、いわゆる逆三角形の形を作っていた。
美しい。
こんな状況ですら、俺は素直にそう思った。
覆い被さってきた篤が片手で袴の帯に手をかけ、乱暴にそれを解こうとする。
しかし結び目が逆に締まって、上手く解けないようだった。
「っ・・・」
珍しい彼の舌打ち。
苛々とした感情が伝わってくる。
何をそれほど、怒らせてしまったのだろう・・・。
袴と帯の隙間から、強引に着物の裾を引き摺りだして、左右に開かれる。
「んんっ・・・」
露わにされた脇腹と胸を忙しなく撫で回されて、すぐに声が出た。
「もう感じてるのか・・・」
これほど荒々しい愛撫なのに、確かに感じていた。
篤に触れられたら、俺はそれだけで感じる。
なのに・・・。
「淫乱だな」
「何言ってっ・・・・や、やめっ・・・あぁっ」
言われた言葉が信じ難くて、篤の目を見ようとした。
だが、すぐに彼は俺の腰を抱えて、ふたつに折るように曲げると、次に袴の裾から手を差し入れて、いきなり下着越しに俺の物を手で掴み、そのまま強く刺激し始めた。
頭が沸騰しそうだった。
「こんな風にされて、気持ちいいのかい。直江や江角、達也さん、・・・そうだな、あとは峰。それに加賀先生だったっけ・・・? 彼らが今の君を見たら、どう思うだろうね・・・いや、すでに頭の中で想像してるかな」
「お・・・お前っ、一体、何を・・・ああっ、ああ・・・っ」
ちょっと待って、ちょっと待ってくれ・・・篤、一体何を考えているんだ!?
まさか、俺は彼に疑われている!?
「すごいな・・・下着をどんどん濡らして、君はいつからそんなに端なくなったんだい」
篤は掌で俺のものを包み、竿を擦り袋を揉みしだき、容赦なく刺激を加え続けた。
「それは・・・お前が、・・・するから」
強引な快感に俺は身体を捩り、腰が揺れ、言葉が切れ切れになった。
「何を言っているのかわからないな。ちゃんと喋ってよ」
彼が冷めた声で揶揄する。
「うあっ・・・も、もうっ・・・」
限界だった。
もうひと刺激でイける・・・そう思った。
だが篤はすっと手を放すと。
「もう・・・何だい? イきそうなのかい? じゃあそろそろ、こっちが欲しいんじゃないのかい」
篤の言葉に、我知れず心が踊る。
そっちも・・・触れてほしい。
「はっ・・・ああっ・・・んん」
たまらず、篤のものを見る。
彼も充分に昂っていた。
あれが・・・欲しい。
「何を見てるの・・・まったくいやらしいな」
「あつ・・・し・・・」
意地悪言わないでくれ。
今の俺はたぶん、お前が言う通りに、端ない淫乱なんだろう。
けれど、お前がそれを俺に言うのか?
それは、・・・ずるいじゃないか。
篤がジャージの前を下着ごと下げて、自分の物を取り出す。
「・・・・・」
大きく猛ったそれが上を向き、濡れた先端が差し込む夕日の中で僅かに光って見えた。
片足を取られ、そのまま少し上半身を裏返しにされながら、捩じるように腰だけ持ちあげられる。
殆ど、ひとつの肩だけで体重を支えるような姿勢になり、不安定で心もとなかった。
袴の裾を派手に捲りあげられて、臀部の辺りがごわついた。
そして下着の裾を寄り分けるような、細かい指の動きがあり、続いて熱く漲ったものがそこへ当たる。
まさか・・・。
「・・・篤っ?」
嘘だろ。
思わず首を捻って、彼の顔を見あげた。
だが、逆光になって表情がまったく見えない。
咄嗟の判断で、出来る限り身体の力を抜く。
次の瞬間、まったく触れてもいない場所へ、篤が固く太いものを強引に捩じ込んできた。
「きついな・・・」
彼が低く呻く。
そりゃそうだろう。
僅かな先走りだけを潤滑剤として、どんどんそれが中へ入ってこようとする。
「・・・・・・・・っ!!!」
しかし、濡らしても解してもいない場所へ、しっかりと勃起した性器を受け入れるのは、無理があり、限界を超えた苦痛で括約筋が悲鳴を上げた。
痛い・・・すごく。
あっという間に目の前が滲んで視界が歪んだ。
彼が力任せに腰を動かし始める。
俺は必死に痛みを耐えた。
繰り返し激しく腰を打ちつけられ、摩擦で内壁が引き攣れて、不自然な体勢で体重をかけられて、身体じゅうの関節がミシミシと軋む。
痛みで気を失いそうだと感じた。
初めてのときも、気が遠くなるような痛みを感じたが、それでもあのときはまだ彼の愛が伝わって来た。
今の篤は、・・・・俺には何を考えているのかわからない。
次から次へと、涙が零れ、顔中がぐしゃぐしゃになる。
身体の痛みはそれでもまだ耐えられる・・・けれど。
今の俺は、きっと見られたものではないだろうと思い、必死に篤から顔を背けていた。
これ以上、嫌われたくなかった。
「はぁっ・・・はっはっ・・・」
いつのまにか滑りが良くなったらしく、腰を打ちつけられるスピードがずっと早くなっていた。
あるいは中が出血していたのかもしれない。
「・・・・・・・・」
もうすぐ彼がイクんだろうな、と他人事にように考える。
「くぅ・・・っ」
短く呻く掠れた声が聞こえて、彼が2度、3度と腰を、深く押しつけてくる。
「・・・・・・・・・」
じんわりと、腹の中が熱くなるのを感じた。
そのまま彼が、俺に覆い被さるように、べたりと胸を背中へ押しつけてきて、そのままじっと動かなくなった。
「あ・・・はぁ、はぁ・・・」
荒い呼吸を繰り返す篤。
湿った吐息を、何度も汗ばんだ皮膚の上に感じた。
彼は射精の余韻に浸っているようだった。
俺の物はすっかり萎えていた。
「気持ち良かったか・・・?」
「そこそこね。・・・なんだ、君はイかなかったのか」
「こんな風に扱われて、いけるわけないだろ・・・」
正直なとことろ、早く抜いてほしかったが、彼の物はまだ固いままのようだった。
そのうえ身体ごとしっかり押さえつけられて、上から彼が体重をかけている為、俺も身動きがとれない。
「何が原因か、まるでわかっていないみたいだね」
「それは・・・今日一日、直江とか達也さんとかと、イチャついているように見えたからだろ? だからって、ここまでされる覚えはないけどな」
「へぇ。やっぱりイチャついてたのか・・・っ」
「んんっ・・・ちょっと、今はまだやめろよ」
再び腰を鋭く押し付けられて、さんざん掻き回された場所に鋭い痛みを感じた。
湿った音とともに、精液に混じって、鉄臭い匂いがプンと立ち上ってくる・・・やはり出血しているようだった。
なんだか、情けなくなる。
「君はそんなことしか考えられないわけだ」
「えっ・・・・違うのかよ」
急に不安になってきた。
まさかと思うが、峰とのことをまた疑われているのだろうか。
そこを突っ込まれたら、この状況で俺は言い返せる自信がない。
正直に言って、俺は自分の気持ちがわからなくなっていた。
篤のことは愛している。
それは間違いない。
けれど、峰は・・・・・。
「どうして君は来なかったんだい」
「え・・・」
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