<シーン2:生徒会長の妄想>
ここは夏休み中の城西高等学校の校庭。
せっかくの合宿だというのに外は生憎の雨だ。
低く鳴り響く雷が西の空をときおり明るく光らせてる。
就寝場所の武道館をこっそりと抜け出していた文芸部1年生部員の鍋島啓介は、渡り廊下で後ろから呼びとめられた。
部長の石田是清だった。
午前中、図書室で石田は副部長の毛利禮次郎とちょっとした言い争いをしていた。
部の方向性について意見が対立した二人が議論の末に一触即発の雰囲気になったことで、午後の部活は皆が黙りがちだった。
初めての合宿の初日にそんなことがあり、鍋島は気が重くなってなかなか寝付けずにいたのだ。
しかしそんな彼に石田は思いもかけないことを言った。
「あいつと揉めたのは、それだけが原因じゃない。俺はあいつがお前に気があるのを知っている。だから、つい・・・」
「え?」
「俺もお前が好きなんだ。付き合って欲しい。考えてくれないか?」
「でも・・・」
その時、突然空が真っ白に光り、地面を揺るがすような激しい雷鳴が轟いた。
「鍋島・・・?」
「あっ・・・す、すいません!」
短い悲鳴を上げて石田に抱きついた鍋島は、顔を真っ赤に染めて離れようとした。
しかしその頼りない肩を、今度は石田がしっかりと引き止めた。
「お前は可愛いんだな」
クスリと笑った石田が、鍋島の顔を覗きこんできた。
二人の唇がそっと重なる。
「誰かが起きてきたら大変です・・・」
「じゃあ、誰も来ないところなら、この先をしてもいいのか?」
恥ずかしがる鍋島を、誘惑するように石田が言った。
「それは・・・」
「こっちに来いよ」
人気のない場所へ二つの影が消えてゆくのだった。
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