6.『正門前の屋台にて』

まりあちゃんと分かれた俺は、自分の席へ戻ろうとして、グラウンドへ向かっていた。
『以上を持ちまして、午前のプログラムをすべて終了いたします。午後は1時15分から・・・』
スピーカーから流れる山村のアナウンスを聞いて、そこで足を止める。
「そうか、もう終了なんだっけ。・・・ってことは昼めしなわけだが、冴子さんのサンドウィッチは全部食っちまったし、となると屋台で調達するしかねえよな」
というわけで、行き先を正門側へ変えると、講堂前に立ち並ぶ屋台ブースへ俺は向かった。
「はい、安いよ、安いよ〜。泰陽名物ヒラメの姿焼きだよ〜」
「あま〜い、りんご飴はいかが〜? パインにイチゴ、マンゴー、スターフルーツもあるよ〜」
「焼きそばいかがっすかー! 普通の焼きそばいかがっすかー!」
「喫茶城陽でーす! ランチセットありまーす! 今ならプラス100円でドリンクとマッサージ付きですよ〜!」
一軒、一軒、色々とツッコみたい気持ちを押さえつつ、俺は人垣から屋台を覗いてまわる。
ここに来ている生徒はざっと見たところ3割程度で、いつも通りに、家から弁当を持って来て、教室で友達と食べている連中が恐らく半分程度、あとは家族と一緒に一般来場者席で弁当を食べている連中がその半分といった感じだった。
家族と一緒に屋台を見て回っている連中も少なくはない。
「おっ江藤・・・っと、あいつも家族連れか」
蕎麦屋の店内で4人掛けのテーブル席に収まる知った顔を見つけ、声をかけようかと悩んだが、結局そのまま素通りすることにした。
「またあの五月蠅い弟に騒がれて、店の人の迷惑になってもたまらん」
「あ、いたいた! こっちこっち!」
「ん?」
蕎麦屋を通り過ぎた所で、明らかに俺に向かって声をかけている男と出会った。



声をかけてきたのは・・。
・直江勇人


・一条達也



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