『愛しきクラスメイトの君へ〜Te Amo_dos』
(注意*オマケみたいなものですが、『Te amo』の続編につき、できればそちらを先にお読みください。面倒ならべつにいいです。)
「なんて・・・俺は馬鹿なんだ」
城東(じょうとう)電機の袋から取り出した、ゲームソフトを目の前に、俺こと、峰祥一(みね しょういち)は頭の中が真っ白になっていた。
発売されたばかりの、サッカーゲームはラナFCのディフェンダーであり、この街出身のサッカー選手、石見由信(いわみ よしのぶ)の監修のものだった。
それは先週末の日曜日、俺の部屋の入り口から妹のまりあが放り投げてきた回転椅子の下敷きになって、大破した目覚まし時計を買い替えるために城東電機へ行ったときのこと。
賑やかな5階のゲームソフト売り場を通り過ぎた俺の目に、大きな宣伝用ポスターが飛び込んできた。
即座に、ゲーム好きでサッカーファンのクラスメイト、原田秋彦(はらだ あきひこ)の顔が思い浮かぶ。
夏前から彼には色々と世話になっており、いつかちゃんと礼がしたいと思っていた。
そう思った途端、特設売り場の行列に並んでいた。
20分かけて精算を済ませ、その足でサービスカウンターへ移動し、プレゼント用のラッピングを依頼する。
日曜夕方とあって、こちらも込み合っていたが、そう待たされることなくカウンターから出てきた女子店員に、ボードを見せられながらラッピング用紙や方法を選んでくれと言われた。
そこまで考えていなかったので、任せると返事すると、今度は店員から色々質問された。
聞かれるままに回答する。
誕生日プレゼントであること、大切な人であること、同い年で、どちらかというと可愛い感じであること、など。
ついでに聞かれはしなかったが、原田の外見的特徴や明るい性格、さりげない優しさなどについても、正確を期すために説明しておいた。
間違いがあっては大変だからだ。
およそのイメージを伝えたのちラッピングを任せて、カウンターから離れて待機する。
隣の家電売り場にはクリスマス用の商材がディスプレーされていて、柱にはロマンティックなポスターが貼ってあった。
赤いキャンドルをまん中に置いて白いクロスがかかったテーブルに、二人分の豪勢なクリスマス料理がセッティングされている。
『おうちクリスマス』のキャッチフレーズとメーカー名が入っていなければ、IH調理器の宣伝だとは気付かないだろう。
昨日プレーしたゲームのイベントに、よく似た雰囲気のスチールがあったことを思い出した。
俺「これ、みんなおまえが作ったのか?」
「うん、いいな・・・」
間もなく店員が包みを持ってカウンターから出てきた。
「お待たせしました。いかがですか?」
手渡された包みはピンク色のラッピング用紙に大きなハートがプリントされ、赤いリボンは花形にアレンジされており、金色のシールに「Happy Birthday」というメッセージが入っていなければ、バレンタインか何かのプレゼントに見えた。
「あの・・・」
顔を上げると先ほどの女子店員がニコニコと笑っていて。
「彼女、サッカーファンなんですか? 私も石見選手好きなんですよ。喜んでくださるといいですね!」
彼女・・・・相手が男だと伝えるのを忘れていた。
「ありがとうございました」
受け取ってエスカレーターへ向かう。
彼女。
恋人。
「それも悪くないな・・・」
11月下旬の日曜の夕方。
家路は向かい風がきつく、外気はうんと冷え込んでいたが、俺の心はとても温かかった。
たとえて言うなら、薔薇色に輝いていた。